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項目 |
詳細や対策など |
A. 一般 |
A-1 |
提案手法の何が新しいかわからない |
何が新しいかを明示的に書く。論文というのは、いままで行われていない何かをやった成果を書くもの。何が新しいのかはっきりわからないなら、指導者に相談する。 |
A-2 |
提案手法で実現できる内容よりも過大な主張をしている |
誇大広告は読者 (査読者) の印象が悪く、つっこみの元になる。提案手法ができること以上でも以下でもない表現によって提案手法の素晴らしさを主張する。また、主張は実験結果で必ず実証する。 |
A-3 |
入力が何で、出力が何かわからない |
入力・出力が何かがわかるようにする。提案手法の全体像を表すような図をかいてみるのもよい。 |
A-4 |
論理に穴が多く、つっこみどころ満載 |
読者から反論の出ないように理論武装して書く。反論が考えられる内容については、先回りして、「~のようにも考えられるが、しかしそれだと…」のように補足を入れる。読者が身近な人なら、読後のコメントに直接フォローを入れることもできるが、世界中の読者にいちいち説明して回ることはできない。書いてあることがすべて。 |
A-5 |
文の流れに論理的飛躍がある |
自分で考えた内容は、自分では当たり前と考えがちなので、説明を省略して論理の飛躍が起こりやすい。他の人に読んでもらって、ひとつずつ論理が展開されているかを確認してもらう。 |
A-6 |
段落の最初にトピックセンテンスがない |
特に英語の論文で、各段落の最初 (あるいは最後) に、その段落で述べる内容のまとめの文 (トピックセンテンス) を書く。そうすれば読者が段落の内容を把握しやすい。 |
A-7 |
ひとつの段落の中にいろいろな情報が入り交じっている |
ひとつの段落にいろいろな話題を混ぜるとわかりにくい。ひとつの段落にはひとつの話題に限り、そのまとめとしてトピックセンテンスを最初に置く。 |
A-8 |
記述が冗長、または説明が足りない |
ひとつの情報を伝えるのに、言葉が多すぎて無駄か、言葉が少なすぎて意味がわからなくなっていないか、他の人に読んでもらって確認する。 |
A-9 |
章や節のタイトルが適切でない |
章や節の内容を反映したタイトルをつける。 |
A-10 |
他の論文から文をコピペしている |
他の論文からコピペするのは、盗作にあたる。大学や専攻によっては、厳罰 (例えば留年) に処される場合もある。自分が過去に書いた論文から文を再利用する場合にも、学会によっては問題になる場合がある。自分の論文をもとに自分の学位論文をまとめるのは OK。 |
A-11 |
論文の題目、章、節のタイトルで、大文字と小文字が乱用されている |
単語の頭文字を大文字にするか小文字にするか、のスタイルを統一する。一般に、冠詞 (a, the) や前置詞は頭文字も小文字にする。 |
A-12 |
説明もなしに略語が使われている |
略語を使うときには、その前に何の略なのかを説明する。さらに、初出の用語をイタリックや太字にする。例: Moving Least-Squares (MLS) |
A-13 |
はっきりと定義をせずに独自の用語を使っている |
独自の用語、あるいは一般的に使われている言葉を特別の意味で使うときには、定義を明記する。 |
A-14 |
指示代名詞が何を指しているのかあいまい |
論文ではあいまいさを極力排除しなければならない。自明でない限り、多少冗長でも、指示代名詞が何を指すかが明確になるようにする。例:「これを…して」→「この画像を…して」 |
A-15 |
参考文献、図、表が本文で引用されていない |
本文中で引用されていないと、それが論文の内容とどう関係するかわからない。それを論文に入れる必要が必ずしもないなら論文から消す。必要ならちゃんと本文で引用し、それについて言及する。 |
A-16 |
TeX の参照が未解決で、?? となっているところがある |
PDF のファイル内を検索して、?? を探し、修正する。 |
A-17 |
表のキャプションが表の下にある |
図のキャプション (説明文) は図の下に付けるのが普通だが、表の場合は上に書くことが多い。 |
A-18 |
図や表のキャプションを見ても何の図・表なのかわからない |
わかりやすいキャプションを付ける。図や表の中に説明を入れるのもひとつの方法。 |
A-19 |
図や表がページの範囲をはみ出している |
図や表がはみ出さないように大きさを調整する。 |
A-20 |
ベクタ画像にすべきものをラスタ画像にしているため、ブロックノイズが目立つ |
Illustrator などのベクタ画像用のソフトで図を描き、eps 形式で保存する。Power Point などでもベクタ画像を描くことができる。あるいは、ラスタ画像の解像度を高くする。解像度を上げてもダメな場合、Word や Acrobat Distiller の設定で、PDF 化するときに解像度を下げるようになっていないか、確認する。 |
A-21 |
図が小さすぎて文字などが見えない |
論文を紙に印刷して読めるかどうか確認する。読者 (査読者) の持っているプリンタは低解像度かもしれないことに注意。図を大きくするか、図の中の説明の文字だけ大きくする。 |
A-22 |
図の内容がよくわからない |
図の内容を工夫する。説明の文字を入れる。 |
A-23 |
比較図の違いがよくわからない |
違いが微妙な場合は、違いの部分に印をつけて、拡大図も併せて表示する。 |
A-24 |
著作権などの問題のある画像を使っている |
著作権者に許可を取り、キャプションに著作権者の名前を表示する。あるいは、問題のない画像に差し替える。 |
A-25 |
説明図にメリハリがない、あるいは見づらい |
説明図も見栄えがよい方が、印象がよい。図が単色だったり、線の太さが一様だったりする場合は、色数を増やしたり、線の太さを変えたりする。一方、色が多すぎたり、フォントのサイズや種類がバラバラだと見づらくなりがちなので、色数を減らしたり、フォントをそろえたりして対処する。 |
A-26 |
数式中の文字の説明がない |
数式の中で使う文字 (例えば x, p, v など) が何を表しているかを説明する。 |
A-27 |
変数がスカラーとベクトルのどちらなのかわからない |
スカラーは Times New Roman フォント (あるいはその原稿で使われている数式用のフォント) のイタリックにする。ベクトルについては、(1)イタリックにして文字の上に矢印を付けるか、(2)太字にする。後者の方が簡単なのでお薦め。 |
A-28 |
数式の文字について、本文や図の中のフォントが数式中と異なっている |
論文によっては、フォントの違いが大事な場合もある (同じ文字でも太字かイタリックかで意味が違う、という例もある)。 数式中の文字とフォントをそろえる。 |
A-29 |
数式の次の文の文頭が字下げされている |
文の構成にもよるが、数式は文の一部あるいは同じ段落の一部という扱いなので、字下げしない。TeX なら \noindent を使う。 |
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B. Title / 論文の題目 |
B-1 |
題目を見ても、提案手法の特徴、他の手法とどこが違うのかがわからない |
既存手法のタイトルと見比べて、差別化できるようなタイトルを考える。 |
B-2 |
既存手法と同じタイトル |
タイトルを変更する。同じタイトルが過去に使われていないか、Google で検索する。 |
B-3 |
自分がかつて発表した論文と同じタイトル |
自分の業績リストに同じタイトルが並ぶのは不自然なので、できるだけ変える。 |
B-4 |
論文の内容よりも過大な主張をしている |
読者 (査読者) はタイトルから内容を想像してから読むので、誇大なタイトルは読者を失望させ、懐疑的にしてしまう。論文の内容を端的に表すタイトルにする。 |
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C. Authors / 著者名 |
C-1 |
著者名が間違っている |
共著者に失礼なので、気を付ける。 |
C-2 |
著者の所属名が間違っている |
共著者によっては複数の所属があったり、複数あっても書くべきものと書かない方がよかったりする場合もある。共著者に確認する。 |
C-3 |
共著者の順番がデタラメ |
共著者の順番にも意味がある。共著者全員の合意をとる。 |
C-4 |
Blind review なのに著者名が表示されている |
査読によっては、公平を期すために著者名を隠した状態で論文を投稿する場合がある。学会のホームページなどで確認する。 |
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D. Abstract / 要旨 |
D-1 |
文献を引用して説明している |
Abstract の段階ではまだ本文を読めるとは限らないので (査読の第一段階など)、文献は極力引用せずに説明する。 |
D-2 |
提案手法についての記述が全体の半分以下 |
研究の背景や既存手法の問題点などを説明するのに文字を割いてしまって、肝心の提案手法の説明がほとんどない、という例がよくある。背景や問題提起はそれぞれ 1 文で済ませ、3 つ目の文で何を提案するかを述べるのがよい、という先生もいる。 |
D-3 |
どういう問題を対象としているのかわからない |
研究の対象を明記する。 |
D-4 |
提案手法の特徴がわからない |
既存手法と差別化できるような、提案手法の特徴を述べる。「既存手法とは異なり、…」と明示的に書くのも 1 つの方法。ただし詳しくなりすぎて、本文を読まないと理解出来ないような記述をしないように注意。 |
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E. Introduction / 序論 |
E-1 |
書き出しが唐突すぎる |
論文は "general to specific" で書くべき。つまり、まず読者の同意を得られるような一般的な話から始めて、徐々に本題に近づくようにする。他の人に読んでもらって確認する。 |
E-2 |
提案手法が何ができるのか、何が新しいのか、学術的貢献 (contribution) が何かわからない |
序論で提案手法の特徴が大まかにつかめるように気を付ける。Contribution については、箇条書きにするのもひとつの方法。 |
E-3 |
話を展開するときの根拠が薄い |
根拠となる資料を示す。例えば論文を引用するなど。 |
E-4 |
提案手法の概要、全体像がわからない |
図や適用例を示し、概要や全体像を示す。読者の理解のために、早めに全体像を示すことが重要。 |
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F. Related Work / 関連研究 |
F-1 |
既存手法と提案手法の違いがわからない |
提案手法の位置付けを明確にするために、既存手法の説明をした後、提案手法との関係を述べる。関連研究として挙げるからには、提案手法と何かしら関係があるはず。『○○は似ているが目的がぜんぜん違うので関連研究に入れない』という人がいるが、それなら関連研究の節にそのように書けばよい。関連研究に挙げられていないと、査読者によっては『なぜそれに言及しないのか』、と追求するきっかけを与えることになる。 |
F-2 |
"Related Works" と複数にしている |
関連研究の意味では不可算なので、Related Work にすべき。複数の手法、と明記したいなら、existing/previous methods などと書けばよい。 |
F-3 |
最新の手法が調べられていない |
ネットで調べて、自分の手法と関連する最新の手法を見つけ、それについて言及する。できれば、さらに実装して比較する。著者に直接メールして質問してみるのも一案。 |
F-4 |
既存手法が分類されていない |
関連研究が秩序なく羅列されていると読みにくいので、カテゴリ分けする。特に学位論文の場合は、文献を系統的に分類する能力も問われる。 |
F-5 |
参考文献の数が少ない |
学位論文や学会の種類に応じて、平均的な数の参考文献を引用する。 |
F-6 |
紹介している既存手法の分野に偏りがある |
あまり特定の研究分野に偏らず、視野を広くして文献を選ぶ。提案手法が、ある大きなカテゴリのサブカテゴリに位置付けられるなら、その大きなカテゴリを代表するような文献を引用しつつ、なぜそのサブカテゴリに注目したのかも述べる。 |
F-7 |
既存手法をひたすらけなしている |
査読者が既存手法の提案者やその知り合い、というケースは多い。査読者も人間なので、欠点を挙げ連ねられて気分を害され、提案手法に否定的な見方をしないとも限らない。既存手法との違いを述べるときは、既存手法の欠点を挙げずに違いを述べられないか考える。欠点を挙げるなら、欠点を書く前にその既存手法の長所や特徴も併せて書いてやる。 |
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G. Method / 提案手法の詳細 |
G-1 |
提案手法がどういう仮定を置いているのかわからない |
提案手法の適用可能範囲 (何ができて何ができないのか) を明確にするために、仮定を明記する。 |
G-2 |
提案手法の入力、出力が何かわからない |
入力・出力が何かがわかるようにする。提案手法の全体像を表すような図をかいてみるのもよい。 |
G-3 |
提案手法でどうしてそのようにするのか、という理由がなく、やり方だけが記述されている |
やり方だけが書いてあると、読者の立場としては、他の方法も考えられる中でなぜそれを選んだのか、という疑問が生じる。まず研究の背景にある思想や哲学を語り、読者に疑問が生じないよう、順をおって方法論を記述する。 |
G-4 |
アルゴリズムがあいまいにしか書かれていない |
アルゴリズムを明確にする。図、数式、擬似コードなどを使う。 |
G-5 |
提案手法が基礎としている手法の説明がまったくないので、初心者には全然内容がわからない |
提案手法のベースになる手法があるなら、それを簡潔に説明する。論文の大半が既存手法の説明、とならないように注意。 |
G-6 |
提案手法が基礎としている手法の説明なのに、勝手に改変した内容になっている |
提案手法のベースとなる手法を説明する際に勝手なアレンジを加えると、どこからが提案手法で、どこからが既存手法なのかがわからなくなる。オリジナルに忠実に説明する。 |
G-7 |
変数が2次元なのか3次元なのか、値の範囲がどこからどこまでなのかがわからない |
変数の次元、定義域を明記する。例えば p が 2 次元ベクトルなら、p ∈ R^2, 整数 i が 1 から N までなら、i = 1, 2, … N, 実数 x が -1 から 1 までなら、x ∈ [-1, 1] など。 |
G-8 |
式が間違っている |
式が間違っていないか確認する。 |
G-9 |
式が全然ない |
論文の客観性や明確さを高めるために数式は有用である。要所要所で追加する。 |
G-10 |
式が煩雑 |
文字の置き換えや、より抽象的なレベルの内容に置き換えるなどして式を簡略化できないか検討する。読者の理解のために複雑な式が必要、と考えられる場合は、付録 (Appendix) に入れることも検討する。 |
G-11 |
説明図がほとんどない |
説明図とそのキャプションだけをざっと見るだけで、論文の全体像に察しがつくのが理想的。重要な部分については説明図とわかりやすいキャプションを入れるようにする。 |
G-12 |
細かすぎる説明を書いている |
実装の詳細やノウハウなど、一般性がなかったり他に応用が効かなかったりする内容は書かない。 |
G-13 |
オリジナリティのある部分の説明が少ない、またはわかりにくい |
自分では当たり前だと思っていることでも、書かれていないことは読者に伝わらない。オリジナリティのある部分をできるだけ詳しく、明確に説明する。また、結果に自信がないせいで消極的な書き方になってしまうことがあるが、その場合はその原因を取り除く。例えば、既存手法より優れているか自信が持てないのであれば、既存手法と実際に結果を比較し、優位性を確認する。直接比較するのが難しいのであれば、代替案を考える。 |
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H. Results / 結果 |
H-1 |
実験を再現するために必要な情報 (実験環境、実験結果の計算時間、データ量など) が書かれていない |
他の人がこの研究内容を比較検討するために必要な情報を載せる。 |
H-2 |
Introduction などで言及した、提案手法の特徴を実証する例がない |
最初に主張した提案手法の特徴を実証しなければ、論文の説得力がない。どのような実験をすればよいかを検討して、その結果および考察を示し、有効性を実証する。 |
H-3 |
有効数字がいい加減 |
数値計算の結果を小数点以下何桁も書いても意味がない場合がある。有効数字は適切な桁数に収める。 |
H-4 |
表に数値データが羅列されている |
数値データを表にまとめただけではわかりにくかったり、個々の数値にはあまり意味がなく傾向が大事だったりという場合がある。グラフの利用を検討する。 |
H-5 |
グラフの縦軸、横軸が何か書かれていない |
グラフの横軸、縦軸が何かをグラフ中に書き込む。 |
H-6 |
結果画像をトリミングしていないので、無駄な空白があって相対的に重要な部分が小さくなっている |
画像の不要な部分をトリミング (切り抜き) する。 |
H-7 |
既存手法との比較がない |
どのような研究でも、何かしら既存手法があるのが普通で、それらとの比較は読者 (査読者) が手法の良し悪しを判断するための重要な材料となる。国際会議では、比較検討のない論文はまず通らない。 |
H-8 |
結果画像が美しくない |
結果画像の見栄えも大事である。特に CG 系の学会ではいかに美しい結果を出すかが論文の採否に大きく影響する。 |
H-9 |
実験結果がどうしてそうなったのか、という考察がない |
考察がない論文は、質の悪いレポートであって、論文ではない。必ず結果の考察を書く。 |
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I. Conclusions and Future Work / 結論と今後の課題 |
I-1 |
論文に書かれている内容のまとめになっていない |
論文で何を提案したかを簡潔かつ明確に書く。Abstract や Introduction と多少重複してもよい。時間がない読者 (査読者) は Abstract, Introduction, Conclusions だけを読んで内容を判断する場合もあるので、手を抜かない。 |
I-2 |
(英語の場合)文が現在完了または過去形になっていない |
英文の場合、Conclusions は現在完了で書くことが多いので、現在完了を使って書く。 |
I-3 |
提案手法の欠点、limitation が書かれていない |
欠点のない、万能の手法というのはまずない。他の人がその研究を発展させられるよう、どこに課題があるのかを書く。ただし、あまり欠点を挙げすぎてしまうと、提案した手法の価値を損ねてしまうので注意。 |
I-4 |
今後の課題のところで、提案手法を全否定している |
研究成果が十分でない、と思うあまり、欠点を挙げすぎてしまうことがある。論文は「既存のものよりよい何か」を書くのが目的なので、これでは本末転倒になってしまう。書き方の問題なら、あまり否定的にならないように書き直す。 |
I-5 |
提案手法の欠点、limitation が致命的すぎる |
致命的な欠陥があるのであれば、研究を根本から見直す。 |
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J. References / 参考文献 |
J-1 |
論文のタイトルで、大文字であるべき単語が小文字になっている |
BibTeX を使って文献を管理していると、論文のタイトルは最初の文字以外は小文字にされる。大文字にしたい単語は { } で囲む。例: gpu → {GPU} あるいは、論文タイトルをまるごと { } で囲んでもよい。 |
J-2 |
そもそも参考文献が書かれていない |
参考文献が挙げられていないと、論文の主張の根拠がわからなかったり、読者に関連する情報を知らせたりすることができない。関連する研究がまったくないということはまずない。適切な文献を挙げる。 |
J-3 |
学会名、年数、ページ番号などが書かれていない |
どのような内容で、どこでいつ発表され、Proceedings (予稿集) の何ページにあるのかがわかるように、論文名、学会名、年数、ページ番号を書く。予稿集が紙媒体でなく DVD などのメディアの場合は、その旨を書き、ページ数は省略する。 |
J-4 |
著者名の first name, family name の順序が間違っている |
基本的に first name の次に family name が来る順序が多いが、first name を省略する場合は family name の次に first name が来る場合もある。 |
J-5 |
著者名を略すときに、first name ではなく family name を略している |
著者名を略すときは first name を略す。family name を略してしまうと、個人の特定が難しくなる。インターネットなどで著者名を確認する。 |
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K. 日本語特有 |
K-1 |
文の主語が何なのかがわからない |
日本語では文の主語を省略できるが、そのために主語が何なのかがあいまいになることがある。あいまいになる恐れがある場合は、多少冗長でも主語を明記する。 |
K-2 |
「です・ます」「だ・である」のゆれ |
敬体・常体は使い分け、どちらかに統一する。論文では普通常体を使う。 |
K-3 |
コンマ&ピリオド・句読点の混在 |
コンマ&ピリオドを使うか、句読点 (、。) を使うか、どちらかに統一する。 |
K-4 |
「無い」「為 (ため)」「所 (ところ)」「事 (こと)」「等 (など)」といった漢字を使っている |
日本文学で使うような助詞や接続詞などの漢字表記は、論文では普通使わない。ひらがなにする。その他の例: 「及び」→「および」、「然し」→「しかし」、「且つ」→「かつ」、「即ち」→「すなわち」 |
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L. 英語特有 |
L-1 |
口語表現が使われている |
口語表現は論文では極力使わないようにする。例えば次のような語は代替表現に差し替える。「いくつかの」"some"→"several" / 「しかし」"but"→"however, although, though (※使い方に注意)" / 「そのため、したがって」"so"→"therefore, thereby, thus, hence (※使い方に注意)" / "this is why …"→"because, for this reason" などを使った文に差し替え / 「~も」"too"→"as well" / "enough"→ "suffice (※動詞), sufficiently (※副詞), sufficient (※形容詞) を使った文に差し替え / "and so on, etc, and so forth"→"such as, including" などを使った文に差し替え |
L-2 |
熟語の誤用 |
文法書などを見て間違いがないか調べる。例: "as following"→"as follows" |
L-3 |
単数・複数の間違い |
可算名詞と不可算名詞、三単現のs、冠詞 (a, the) などに注意する。例えば "Related Works", "informations" は不可算名詞なので間違い。 |
L-4 |
自動詞・他動詞の誤用 |
自動詞は目的語を取らない。他動詞は目的語を取る。動詞の用法を確認する。 |
L-5 |
同じものなのに言い換えているので、同じものを指すのかわかりづらい |
論文ではあいまいさを排することが第一なので、多少冗長でも、同じものを指すときには同じ言葉を繰り返し使うようにする。 |
L-6 |
Figure ??, Section ??, Chapter ??, Equation ??, Table ?? などの頭文字が大文字でなく小文字 |
番号付けされた図、節、章、式、テーブルなどを示すときは、Figure, Section, Chapter, Equation, Table のように大文字で書き始める。 |
L-7 |
複数の Figure や Equation などを参照するときに、Figures や Equations のように複数形にしていない |
複数のものを参照するときは、複数形にする。 |
L-8 |
学位論文の場合に、"we", "our method" を主語にしている |
"we", "our method" を使っても間違いではないが、学位論文の場合は "this thesis" や "the present/proposed method" などを主語にする方が客観的になってよりよい。 |
L-9 |
スペルミス |
自分で見直してスペルミスがない、と思っていても、一つや二つは必ずあると思った方がよい。一つでもスペルミスがあると読者 (査読者) に対する論文の信用を損なうので、必ずスペルチェッカでチェックする。簡易な (しかし確実性は多少劣る) 方法としては、PDF の単語をすべてコピーして、MS Word に貼り付けて、赤線が引かれないか調べる。 |
L-10 |
単語のつながり (コロケーション) が不適切で、不自然な英語になっている |
日本語の意味に対応する英単語を辞書で引いても、その英単語を使って自然な英文が書けるとは限らない。Google などで例文や単語と単語のつながりの実例を調べる。 |
L-11 |
図や本文に日本語フォントを使っている |
海外の読者によっては、日本語フォントが含まれていると文字が読めない場合があるので、日本語フォントは使わない。ギリシャ文字や×などの記号も日本語フォントは不可。 |
L-12 |
ダブルクォーテーションの対応が取れていない |
TeX でダブルクォーテーション(二重引用符) “ ” の最初と最後の向きを対応させるには、キーボードの " を使うのではなく、`` '' のようにシングルクォーテーションを二つずつ並べる。 |
L-13 |
カンマ( , )、ピリオド( . )、コロン( : )、セミコロン( ; ) のあとにスペースがない |
カンマ、ピリオド、コロン、セミコロンのあとにはスペースを入れる。 |
L-14 |
副詞 (句) で始まる文がやたらと多い |
日本語では文頭に副詞を置くことが多いが、英文では文頭に副詞を置かなくても文と文がつながっている方が、自然とされる。副詞が文頭にある文を -1、文頭にない文を +1 としてカウントして、トータルがプラスになるように心がける。 |
L-15 |
長文が and で繋がれていて、文と文の関係がわかりにくい |
文と文の主従関係 (主:大事な情報を含む文、従:補足的な文) をはっきりさせる。補足的な情報を、従位接続詞 (because, when, if, before, after など)、不定詞や動名詞句を使って副詞句/節にできないか検討する。 |
L-16 |
ひとつの文がやたらと長いのに、長さあたりの情報量が少ない |
簡潔な文で情報を伝えられるよう心がける。長い文があれば、短くできないか検討する。 |
L-17 |
文と文が話の流れ的につながっていない |
文の話題が急に変わらないように気をつけつつ、議論を展開する。 |
L-18 |
著者が2人の論文を引用するときに et al. を使っている |
著者が 3 人以上の場合は、第一著者名の family name のあとにラテン語の et al. を付けるが、2 人の場合は et al. を使わず各著者の family name を書く。 |
L-19 |
省略形を使っている |
論文では doesn't, can't, couldn't のような省略形は使わない。does not のように省略せずに書く。ただし can not とは書かずに、cannot と 1 語にする。 |
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M. 論文投稿 |
M-1 |
論文投稿前に共著者に原稿をチェックしてもらっていない |
論文が採択された場合、第一著者だけでなく、共著者も論文の内容に責任がある。採択論文は業績になる一方、著者の名誉にも関わるので、共著者に論文の内容について合意をとること。 |
M-2 |
すでに投稿した論文の内容との差分があまりない |
論文の内容にあまり差分がない (ひとつの目安として 30% 以下) 場合、いくら違う論文だと主張しても、査読者に二重投稿 (double submission) と見なされて不採択 (両方投稿中なら両方とも不採択) となることがあるので注意する。研究者倫理としても、大して進捗のない研究をいたずらに何度も発表するのは好ましくない。 |
M-3 |
学会の対象とする分野と論文の内容がズレている |
投稿先の学会がどういう論文を求めているか、過去に採択された論文にも目を通してチェックする。分野が全然違う場合、内容がよくても、学会の求めるテーマに相応しくないことが理由で不採択になることもある。採択率を上げるために、傾向と対策を知ることが重要。 |